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刺靑 By: Junichiro Tanizaki (1886-1965) |
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Notes on the signs in the text 《...》 shows ruby (short runs of text alongside the base text to indicate pronunciation). Eg. 其《そ》 | marks the start of a string of ruby attached characters. Eg. 十三|年目《ねんめ》 [#...] explains the formatting of the original text. Eg. [#ここから3字下げ] 刺靑 谷崎潤一郞著 刺靑《しせい》 其《そ》れはまだ人々《ひと/″\》が「愚《おろか》」と云ふ貴《たうと》い德《とく》を持《も》つて居《ゐ》て、世《よ》の中《なか》が今《いま》のやうに激しく軋《きし》み合《あ》はない時分《じぶん》であつた。殿樣《とのさま》や若旦那《わかだんな》の長閑《のどか》な顏《かほ》が曇《くも》らぬやうに、御殿女中《ごてんぢよちゆう》や華魁《おいらん》の笑《わらひ》の種《たね》が盡《つ》きぬやうにと、饒舌《ぜうぜつ》を賣《う》るお茶坊主《ちやばうず》だの幇間《はうかん》だのと云《い》ふ職業《しよくげふ》が、立派《りつぱ》に存在《そんざい》して行《ゆ》けた程《ほど》、世間《せけん》がのんびり[#「のんびり」に傍点]して居《ゐ》た時分《じぶん》であつた。女《をんな》定《さだ》九|郞《らう》、女《をんな》自雷也《じらいや》、女《をんな》鳴神《なるかみ》――當時《たうじ》の芝居《しばゐ》でも草雙紙《くさざうし》でも、すべて美《うつく》しい者《もの》は强者《きやうしや》であり、醜《みにく》い者《もの》は弱者《じやくしや》であつた。誰《だれ》も彼《かれ》も擧《こぞ》つて美《うつく》しからむと努《つと》めた揚句《あげく》は、天禀《てんりん》の體《からだ》へ繪《ゑ》の具《ぐ》を注《つ》ぎ込《こ》む迄《まで》になつた。芳烈《はうれつ》な、或《あるひ》は絢爛《けんらん》な、線《せん》と色《いろ》とが其頃《そのころ》の人々《ひと/″\》の肌《はだ》に躍《おど》つた。 馬道《うまみち》を通《かよ》ふお客《きやく》は、見事《みごと》な刺靑《ほりもの》のある駕籠舁《かごかき》を選《えら》んで乘《の》つた。吉原《よしはら》、辰巳《たつみ》の女《をんな》も美《うつく》しい刺靑《ほりもの》の男《をとこ》に惚《ほ》れた。博徒《ばくと》、鳶《とび》の者《もの》はもとより、町人《ちやうにん》から稀《まれ》には侍《さむらひ》なども入墨《いれずみ》をした。時々《とき/″\》兩國《りやうごく》で催《もよほ》される刺靑會《しせいくわい》では參會者《さんくわいしや》おのおの肌《はだ》を叩《たゝ》いて、互《たがひ》に奇拔《きばつ》な意匠《いしやう》を誇《ほこ》り合《あ》ひ、評《ひやう》しあつた。 淸吉《せいきち》と云《い》ふ若《わか》い刺靑師《ほりものし》の腕《うで》ききがあつた。淺草《あさくさ》のちやり[#「ちやり」に傍点]文《ぶん》、松島町《まつしまちやう》の奴平《やつへい》、こん/\[#「こん/\」に傍点]次郞《じらう》などにも劣《おと》らぬ名手《めいしゅ》であると持《も》て囃《はや》されて、何《なん》十|人《にん》の人《ひ... Continue reading book >>
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