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友情 By: Saneatsu Mushanokoji (1885-1976) |
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Title: 友情 (Yūjō) Author: 武者小路実篤 (Saneatsu Mushanokoji) Notes on the signs in the text 《...》 shows ruby (short runs of text alongside the base text to indicate pronunciation). Eg. 其《そ》 | marks the start of a string of ruby attached characters. Eg. 十三|年目《ねんめ》 [#...] explains the formatting of the original text. Eg. [#ここから3字下げ] 友情 武者小路実篤 上 編 一 野島が初めて杉子に会ったのは帝劇の二階の正面の廊下だった。野島は脚本家をもって私《ひそ》かに任じてはいたが、芝居を見る事は稀《まれ》だった。此日も彼は友人に誘われなければ行かなかった。誘われても行かなかったかも知れない。その日は村岡の芝居が演《や》られるので、彼はそれを読んだ時から閉口していたから。然し友達の仲田に勧められると、ふと行く気になった。それは杉子も一緒に行くと聞いたので。 彼は杉子に逢ったことはなかった。しかし写真で一度見たことがあった。それは友達三四人とうつした十二三の時の写真だったが、彼はその写真を何気なく何度も何度も見ないわけにゆかなかった。皆の内で杉子は図ぬけて美しいばかりではなく、清い感じがしていた。彼はその写真を机の前に飾っておいたら、きっといい脚本がかきたくなるだろうと思った。しかし彼は仲田に写真をくれとは云えなかった。そして其後仲田の処へ行ってももう一度その写真を見せてもらうことは出来なかった。そして当人にも逢うことは出来なかった。一度、声を聞いたことがあるように思った。しかしそれは杉子ではなく、杉子の妹の声だったかも知れなかった。 彼が帝劇に行った時はまだ少し早かった。彼は廊下に出て今に仲田が妹をつれてくるかと思った。それを心待ちしていたが、若い女をつれてくる男が仲田ではないと返って安心もした。 彼はその時、村岡が友達二三人と何か声高に話しながらくるのに出あった。彼は村岡とはある会で一度あったことがあるが、目礼をしたりしなかったりする間がらだった。そしてこの頃は逢っても知らん顔をすることを努めていた。それは彼が村岡のものをよく悪口云ったからである。今日やられる芝居も彼は公にではないが、可なり悪口云った。元よりそれは文学をやる仲間同士で云ったので法科に行っている仲田とは殆んど文学の話はしなかった。仲田は彼が村岡のものを嫌っているなぞと云うことは知らなかった。新らしいものだから、それに評判のいいものだから、彼もきっと見にゆくだろうときめていた。それで説明掛位に彼をつれて芝居を見ようと云うのだった。彼はそれに気がついてはいた。そしてそれを迷惑にも思った。しかし断る気にはなれなかった。 彼は村岡と顔を見合せた。両方がお辞儀したそうにも見えた。しかしどっちも自分の方からさきにお辞儀しようとはしなかった。お世辞のように思われるのもいやだったのだろう。或は先にお辞儀して相手に見くびられるのがいやだったのだろう。少なくとも村岡は彼より四つ五つ上で、世間にももう認められていた。彼は五つ六つ短かい脚本をかいたが、誰にも顧みられなかったのは事実だ。しかし彼は自分の方から頭をさげる... Continue reading book >>
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