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雲形紋章   By: (1858-1932)

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Title: 雲形紋章(Kumogata monshou) Author: John Meade Falkner Translator: 林清俊(Kiyotoshi Hayashi) Character set encoding: UTF 8

Notes on the signs in the text

《...》 shows ruby (short runs of text alongside the base text to indicate pronunciation). Eg. 其《そ》

 プロローグ

 鉄道駅舎、教育施設、教会堂を建造し、著述家にして古美術商、さらにファークワー・アンド・ファークワー商会の共同経営者であるジョージ・ファークワー准男爵は、自分のことばに重みを持たせようと、事務室の椅子にそり返り、くるりと横をむいた。彼の前にはカラン大聖堂の修復工事に監督として送られる部下が立っていた。  「それじゃ、行ってきたまえ、ウエストレイ。充分気をつけるんだよ。きみが取り組むのは重要な仕事だということを忘れるな。教会もあそこまで大きくなるとさすがに『その光り、升の下に隠るることなし』(註 マタイ伝から)だ。この国家遺産保存協会とやらは、うちの会社をだしにして自分たちの存在を宣伝しようとしているらしい。アンブリ(聖器棚)とアバクス(頂板)の違いもわからぬ無知蒙昧の輩、ペテン師ども、流行を追うだけのど素人が。あの連中はきっとわれわれの仕事にけちをつけてくる。出来映えがよかろうが、悪かろうが、並だろうが、彼らにとっては同じなんだよ。とにかくけちをつけようと身構えているんだ」  その声は専門家としての強い軽蔑に満ちていたが、気を静めると、仕事の話に戻った。  「南袖廊の屋根と聖歌隊席の穹窿天井には細心の注意が必要だ。中央塔にも以前から問題があって、交差部のかなめの基柱は補強工事をしたいのだが、何しろ費用が出ない。中央塔のことは黙っていることにした。なだめるすべもないのに、いたずらに疑いを抱かせるのは意味がないからな。今やってくれといわれているのは取るに足りない作業だが、それだけでもどうやって予算のやりくりをしたらいいのやら。資金繰りのめどがついたら塔に手をつけよう。しかし袖廊と聖歌隊席の穹窿天井は急を要する。鐘は心配しないでいい。鐘枠にがたがきていて、もう何年も鳴らされていないんだ。  精一杯できるかぎりのことをしたまえ。金銭的にはあまり恵まれたお勤めとは言えないが、最善をつくすことだ。会社に利益なんか一銭もありはしない。しかしあの聖堂は有名だから、いい加減な仕事はできないよ。主任司祭には手紙を書いておいた。愚劣な男で、カラン大聖堂の管理には、貴婦人の小間使いなみにむいていないのだが、とにかく彼にはきみが明日到着すること、もしも先方がきみに会いたいと言うなら、午後聖堂に顔を出すということを伝えてある。浅はかなやつだが、あそこの法定管理者だし、修復費用調達にあずかってなかなか力があったからね。やむを得んが我慢しよう」

 第一章

 英国陸地測量部制作の地図ではカラン・ウォーフ、地元の人には単にカランと呼ばれている場所は、今でこそ海岸線から二マイルほど内陸部にあるが、かつてはもっと海寄りで、無敵艦隊との戦いに六隻の船を送り、その一世紀後にはオランダの攻撃を迎え撃つため四隻の船を送り出した由緒ある港として歴史に輝かしい名を残している。ところがやがてカ... Continue reading book >>




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